四年にわたる激闘の末、私はついに勝利を手にしました。数え切れないほどの粘着シートを投入し、超音波機器から殺鼠剤まで、投じた費用と労力は計り知れません。実家を占領していたネズミたちは、今や一匹の気配もありません。
けれど、この平和はあまりに脆いものでした。 認知症を患い、元来のズボラさに拍車がかかった母にとって、私の流した血と汗と涙(そして多額の費用)は、まるで見えていないようです。相変わらず生ゴミは放置され、食べ残したお皿がテーブルに並ぶ日常。そのたびに勃発する母娘のバトルも虚しく、実家の不衛生な環境は、皮肉にも加速していくようでした。
そしてある夜。 静まり返った台所の闇の中から、またしてもあの不快な音が響き始めたのです。
「カサカサ、ゴソゴソ……」
ネズミとは違う、もっと小さく、もっと無機質な足音。 耐えかねて電気をつけると、そこには数匹の「G」たちが、わがもの顔で台所を闊歩し、光を浴びて一斉に逃げ惑う姿がありました。
「次は、お前たちか。」
王座を追われたネズミに代わり、この家に君臨したのは、次なる害虫・ゴキブリたちでした。
私はすぐさまカインズへ走り、アースの「ゴキブリキャップ大容量18個入り」を手に取りました。彼らはキッチン下の引き出しの奥深くまで侵入し、あらゆる調理道具を汚染していました。 全盲の父、そして白内障が進む母の目には、この惨状は映っていないのかもしれません。けれど、私には無理なのです。玄関に入った瞬間に鼻を突く、あの独特の糞の匂い。このキッチンで作られる母の料理に、どうしても箸を伸ばせなくなってしまった理由も、そこにありました。
「駆逐してやる。一匹残らず……!」
心の中で、あのアニメの主人公が再び目を覚ましました。 愛知と静岡を往復し、介護に奮闘しながら挑む、第二の聖戦。 私の「G殲滅作戦」が、今、静かに幕を開けました。
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