⑷ネズミからの実家奪還に捧げた、私の四年間。

母の介護

月に一度、静岡と愛知を往復する二拠点生活が始まって、はや四年。 実家に帰省する私の目的は、両親を病院へ連れて行き、ケアマネさんと今後のプランを練り、少し億劫そうにしている母の背中を押して家事を促す……そんな「介護」がメインのはずでした。

しかし、玄関の扉を開けた瞬間に鼻を突く、あの強烈な異臭。 「……ああ、またか」 その匂いは、仕掛けておいた粘着シートが、確実に「戦果」を上げたことを告げる合図。私の帰省はいつしか、ネズミとの終わりなき捕獲作戦の継続でもありました。

彼らは大胆不敵です。 ケアマネさんとの真剣な面談の最中、すぐそばの鴨居を堂々と駆け抜けていく姿を目撃したこともあります。昼間は押し入れの奥に潜み、夜になれば活動を開始。襖を「ガリガリ」と執拗に齧る音が響きます。そんな夜は、襖をわずかに開け、その隙間に罠を仕掛けるのが私の日課。そこを通るネズミが、勝利を確信した瞬間に足元を掬われる……。そんな心理戦の毎日でした。

そして、日中はとにかく掃除。見えない隙間には、彼らが残した「負の遺産」が潜んでいるからです。 ある日、意を決してソファを動かした時の衝撃は、今も忘れられません。そこにあったのは、糞尿にまみれた地獄絵図。お菓子の袋に、カビの生えたみかんの皮……。 「お母さん、見てよこれ!」 惨状を突きつける私に、母は自分のだらしなさという現実を突きつけられたショックからか、逆ギレしてその場を去ってしまいました。

それでも、私は手を止めませんでした。 カーテンを揺らした時に現れた、巨大なトカゲの尻尾のような影……。姿を現した主の大きさに度肝を抜かれながらも、私はただ、この家を「人間が住む場所」に戻したかったのです!

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