母に認知症の診断が下りたのは、約5年前のこと。 始まりは、地域の民生委員さんからの「お母さん、ちょっと様子がおかしいよ。ケアを考えた方がいい」という一本の電話でした。
薄々感じていた違和感が、確信に変わった瞬間。 頭の中に「介護」という重い二文字が、逃れようのない現実として浮かび上がりました。
そういえば、数ヶ月前に二人で参列した親戚の葬儀を、母は「一人で行ってきた」と語るようになっていました。そこにいたはずの私の存在が、母の記憶から音もなく消えている。 「年波のせいかな」と自分に言い聞かせていた微かな不安は、帰省するたびに、無視できないほど大きな塊へと膨らんでいきました。
元々片付けが苦手だった母の部屋は、もはや尋常ではない荒れ方。 そして夜、静まり返った家の中に響くのは、どこからともなく現れるネズミたちの足音でした。一匹や二匹ではない。台所を占領し、食べ物を求めて縦横無尽に駆け巡る影。
その惨状に愕然としながら、私は静かに拳を握りました。 こうして、私の「ネズミ駆除作戦」と「母の介護生活」という、長い戦いの幕が切って落とされたのです。


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